人口問題 1996
世界の人口問題は総人口の絶対数とその急激な増加率の問題として語られることが多い。そしてそれに見合った収容力が地球に備わっているのかどうか、すなわち膨大な人口を養うにあるだけの食料や水、住宅、土地、その他の資源エネルギーを確保するとともに、その基盤となる地球の環境を維持していけるかどうかが問題となる。
事実、産業革命以後、特に第二次世界大戦以後の世界人口は指数関数的に伸びてきており、まさに人口爆発と呼ぶに相応しい。
世界の人口が10億人から20億人に到達するのに123年を要したが、その後30億人までは33年、40億人までは14年、そして50億人まではわずか13年しかかかっていない。次の大台に達するのは11年と更に短く、1998年には60億人を突破すると見込まれている。
1996年夏の世界の総人口数は58億人。
増加率を主題に低下してきていて今後もこの傾向は続くものとみられるが、人口そのものは依然として年間8600万人を上回る勢いで増えている。
国連の推計によれば、世界の人口は2025年までに83億、2050年までには約100億人に到達するものと見込まれている。
しかも重要なことは、こうした将来の人口増加の大半がアジア、アフリカなどの発展途上国で起きることである。
人口の安定化という観点から見ると、最も重要なのは女性1人が生産一生の生涯で産むと見込まれる平均子供数を示す「合計特殊出生率」のゆくえである。これがほぼ二人にまで低下すれば夫婦一組で自分たちの人数分だけを補充することになり、将来人口を増やすことにはならない。出生率は概ね1960年以後、下降線をたどっている。
現在の世界全体としての合計特殊出生率は約3人と見積もられている。これを先進諸国についてみると、1950年代初頭には2.8人ほどであったものが、今日では約1.7人へと下がっている。他方、発展途上国の場合は1960年の6.2人から現在では約3.4人へと低下している。しかしながら、最貧途上国では未だに約5.6人という水準に止まっている。
そこでこれまでに主として発展途上国の出生率を引き下げるために家族計画や避妊法の普及に力が注がれてきた。その成果もあり発展途上国全体としての出生率は劇的に低下した。最も顕著な改善を遂げたのは東、東南アジアと中南米の諸国である。
他方、食料をはじめとする資源エネルギーの消費という観点からすると、先進国と発展途上国の間には大きな格差がある。
例えばアメリカ人の一人当たりのGDPはインド人の約17倍、国民一人当たりのエネルギー消費量は約33倍である。これをアジアで最も貧しいバングラデシュと比べるとその格差はもっと大きく、GDPについては117倍、エネルギー消費は134倍もの開きがある。つまり現状のエネルギー消費水準を前提に単純化して言うと、一人のアメリカ人が生まれることは、33人のインド人、134人のバングラデシュ人が増えるに等しいのである。
(世界を読むキーワード 1997)
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