生物蓄積、生体濃縮について
生態系中の化学物質について考える時には、動植物の個体内に物質が蓄積する生物蓄積や生物濃縮という現実や、捕食動物と獲物で構成される食物ピラミッドの階層が上がるにつれて、蓄積される化学物質の濃度が上がるということを、つねに念頭に置いておく必要がある。確かに、放射性核種は食物連鎖の一定部分に蓄積されることがある。そのうえ、多くの放射性核種については、連続する食物連鎖の階層を上がっていくにつれて蓄積される放射性核種の濃度が上昇し、その結果、生物濃縮が引き起こされる。私たちが検討してきた他の有毒物質に関して言えば、生物濃縮は水界生態系における放射性核種について特に重要に思える。
放射性核種、つまり放射性同位元素の数は非常に多いが、原子力事故で発生する可能性があるものに注意が必要である。チェルノブイリ事故の後、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137や、少量のルテニウム103、テルル132、ストロンチウム90がヨーロッパ諸国のいくつかで検出さ?黷ス。ストロンチウム90は従来から、核兵器実験で生じる放射性降下物と関連があった。
どの場合も、生体内に放射性核種がとどまる期間は、存在する安定的な非放射性同位元素の分量、および放射性核種と安定同位元素の間の代謝的相互作用によって違ってくる。治療を行う基本原理の一つは、その放射性核種が取り込まれるのを阻むことができる安定同位元素を投与することである。生物学的には、ヨウ素131は急速に吸収され、ヨウ素が体内を移動する経路をたどって甲状腺に集まる。人間の場合、ヨウ素131のほとんどは尿で体外に排泄される。セシウムはカリウムと同じで筋肉細胞全体に行き渡る。実際、カリウムとセシウムの両方が人体に与えられると、人体はセシウムのほうを優先的に体内にとどめる。ストロンチウムはセシウムと同じように代謝されて骨の細胞に取り込まれるため、体内での代謝回転速度はゆっくりしている。ルテニウム103とテルル 132は吸収されにくいため、危険性は最も少ない。
私たちが調査したのはチェルノブイリ事故であるが、このような原子炉関連の事故に注目すると、ヨウ素131とセシウム137の動きを、災害の状態と必要な対応の種類を示す有益な指標と考えることができるであろう。
SMC
http://smc-japan.org/?p=1620
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