2016年10月16日日曜日

放射線情報

@mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
2016年10月14日号
福島県の営農再開に向けた試験地を訪ねて
西 友子
福島県の除染特別地域であり共に除染作業が終了した川俣町の山木 屋地区と 葛尾村を先日訪れる機会があった。これらの地域では今後の営農再開 に向け、 農業・食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター、総合セン ター、並びに近隣の各県農業関連センターや試験場が共同し、農業の 再開に向 けての研究を行っているが、今回はその状況について若干述べてみた い。
平成23年3月11日の東京電力福島原子力発電所の事故以降、落下した 放射 性物質を除去するため表土を5cmも剥ぎ取ることになったが、
作物栽培にとってとても大変なことである。まず述べておきたいことは、
土壌とは 100年間で僅か数mmしか生成されない貴重な資源であり、今回除去さ れた表土とは、何百年もかかって生成されてきた農業基盤そのものだからであ る。
除去された土壌の厚さと、 農地の除染作業では、山砂の 厚さが均一ではないため、場所により残された表土と山砂の割合が異 なる結果となった。
しかし、この割合を農地全体で均一にすることはまず不可 能とのことである。
そして山砂では作物が育たないので、表面に残った僅かな 土壌と山砂が一緒の状態で、どのように作物を育てることができるかについて は、現場での栽培試験結果からでしか予測を立てることができない。
それは気の遠くな るような地道な作業が必要であるが、訪問した試験区では担当職員に より黙々と実行され始めていた。
一方、土壌の除去には重機が使われたので、重機の重さで農地が圧 縮され土質が変わっただけでなく、排水ができなくなり、農地には水が溜まっていた。 そのような場所は排水設備を整え直す必要があり工事も予定されてい
また、少し傾斜のあるところでは、残された貴重な表土がどの程度流出する かを調べ るための、長い水受けの装置が設置されていた。
農業の再開の手順の一つとして、まず、農地に同一植物を植える試 みが始 まっていた。同じ植物で農地を埋め尽くすように育てることができな ければ、 それに続いて生育させる農作物を均一に育てることはできないからで ある。早 く育つだろうと南方由来の種子を農地に撒いたところでは、生育してい た雑草が農地のあちこちから生えてきて、育ち始めた植物よりも早く 育ってい た。
そのため、また埋め尽くす植物の選び直しと生育試験が必要との ことだっ た。
ただし、試験場での実験結果が良かったからといって、農地 で同じ結果が得られるとは限らないということである。

原子力委員会
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

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